2022年、ノーベル化学賞を受賞した、キャロリン・ベルトッツィ教授、モーテン・メルダル教授、バリー・シャープレス教授の研究内容を簡単にわかりやすく解説しました。「クリックケミストリー」という手法で、医薬候補化合物、創薬、がんの治療薬、バイオプローブ、ソフトマテリアルなどの様々な機能性物質創製に応用されます。
クリックケミストリー(Click Chemistry)とは,比較的シンプルな構造の化合物同士を高い反応性と選択性で炭素-ヘテロ 原子結合反応により新たな機能性分子を合成する手法であ り,2001年にスクリプス研究所のK. B. Sharplessによって提唱されました。この“クリック”という言葉は,あたかもシートベルトのバックルがカチッと音を立ててつながるように 2つの分子が簡単につながることに由来します。一般にクリックケミストリーの定義として以下のことが要求されます。
- 目的の生成物を高収率で与える。
- シンプルな構造を持つ分子同士を組み合わせる。
- 副生成物をほとんど生じない。
- 実験操作が簡便で,カラムクロマトグラフィーなどの精製操作を必要としない。
- 水中でも反応が進行する。
これらの反応の代表例として,1961年にR. Huisgenによって開発されたアジド類とアルキン類による[3+2]双極子付加環 化により ,安定な1,2,3-トリアゾールを合成する反応が挙げられます。1,2,3-トリアゾール環は酸化や還元を受けることが無く,基質同士を強固に連結させる手法として最もよく用いられています。
通常この反応では銅(I)などの金属触媒が反応促進剤として用いられます。特に配位子としてトリス[(1-ベンジル-1H- 1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン(TBTA)[T2993]を 組み合わせた場合には優れた反応活性を示すことが報告され ています。
この反応は副生成物を生成することなくほぼ100%の収率 で目的物を与えるため,再結晶やカラムクロマトグラフィーなどの精製を必要せず,環境調和型の反応と言えます。
ことしのノーベル化学賞の受賞者に、さまざまな分子を効率的に結合させる手法の発見などに携わったアメリカの大学の研究者など3人が選ばれました。
受賞が決まったのは、▼アメリカ、スタンフォード大学のキャロリン・ベルトッツィ教授と▼デンマーク、コペンハーゲン大学のモーテン・メルダル教授、▼アメリカ、スクリプス研究所のバリー・シャープレス教授の3人です。
3人はさまざまな分子を効率的に結合させる手法の発見などが評価されました。
2022年10月5日:NHK
シャープレス教授はさまざまな分子の結合を、効率的でシンプルに行う「クリックケミストリー」と呼ばれる手法を提唱しました。
そして、シャープレス教授とメルダル教授はそれぞれ別々に、「クリックケミストリー」の柱となる反応を開発しました。
この手法では余分な生成物をほとんど作らずに求める合成物を効率的に生み出すことができ、さまざまな反応条件を探さなくてもねらった分子を結合させることができるようになりました。この手法によって作ることが出来る分子の種類が大幅に増え、医薬品や材料の開発など、幅広い分野で活用されています。
またベルトッツィ教授は、この手法を生きた細胞でも使えるようにしました。たとえば、特殊な化合物を細胞の表面に結合させることで細胞を光らせたり、印を付けたりすることができるようになり、がん細胞の分子の動きなどを観察することが可能になりました。
この研究をもとに新しいタイプのがんの治療薬の開発などが進められています。
2022年10月5日:NHK
化合物同士を簡便に合成できるので、医薬候補化合物、創薬、バイオプローブ、ソフトマテリアルなどの様々な機能性物質創製に応用されます。
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