東京医科歯科大学の大野京子教授らのグループは、重い近視の患者の目に赤色の光を当てて、症状の進行を防ぐことができるかを調べる臨床研究を開始しました。現在のところ、赤色光治療は保険適用外ですが、一部の眼科医院や眼鏡店では、トライアルや割引サービスを提供しているところもあります。
東京医科歯科大学の大野京子教授らのグループは、重い近視の患者の目に赤色の光を当てて、症状の進行を防ぐことができるかを調べる臨床研究を開始しました。
近視は、眼球の形が伸びることで近くのものが見えやすく、遠くのものが見えにくくなる病気です。進行すると、眼球の形がいびつになって網膜剥離や緑内障などの合併症が起こり、視覚障害や失明につながる可能性があります。
グループによると、特殊な装置を使って目に赤色の光を当てることで、網膜を包む膜が厚くなり、眼球の変形が進んで近視が悪化するのを防ぐ効果が期待できるということです。
臨床研究では、強度の近視などの症状がある18歳以上の患者30人を対象に、2か月間にわたって毎日2回、3分間光を当ててもらい、効果や安全性を調べます。
海外では、目に赤色の光を当てる治療が小児で承認されている国もありますが、大人での臨床研究が行われるのは世界で初めてです。
大野教授は「重い近視が進むことによる失明は、これまで治療が難しく、経過を見るしかなかった。研究で有効性が証明されれば、自宅でも行えるような画期的な治療法になるはずだ」と話しています。
赤色光が近視の進行を防ぐメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、以下の2つの可能性が考えられています。
脈絡膜は、網膜を栄養する血管が豊富に存在する膜です。赤色光を照射すると、脈絡膜の厚みが増加することが知られています。脈絡膜の厚みが増加すると、網膜への血流量が増加し、網膜の成長が抑制されると考えられています。
近視は、眼球の形が伸びることで起こります。赤色光を照射すると、眼軸の伸びを抑制するホルモンの分泌量が増加することが知られています。このホルモンの分泌量が増加すると、眼軸の伸びが抑制されると考えられています。
東京医科歯科大学の臨床研究では、赤色光を照射したグループの眼軸の伸びが、照射しなかったグループに比べて抑制されたことが確認されました。この結果から、赤色光が近視の進行を防ぐ効果があることが示唆されています。
なお、赤色光は、屋外で浴びる太陽光にも含まれています。そのため、屋外で過ごす時間を増やすことも、近視の進行を防ぐことにつながると考えられています。
小児で赤色光治療が承認されている国は、以下のとおりです。
これらの国では、6歳から12歳の近視の子どもを対象に、赤色光治療の臨床試験が行われ、有効性と安全性が確認されたことから、承認されました。
臨床試験では、被験者の年齢は6歳から12歳で、近視の程度は、両眼の近視度数が-1.00D以上、-6.00D以下とされました。被験者の数は、各国で異なるものの、いずれも数百人から数千人にのぼります。
臨床試験の結果、赤色光治療を受けたグループの近視の進行が、受けなかったグループに比べて抑制されることが確認されました。
具体的には、眼軸の伸びが抑制されたほか、近視の度数が進行する割合が低下したことが示されました。
なお、赤色光治療は、眼科医院や眼鏡店などで受けることができます。治療時間は、1回あたり約3分です。
はい、日本の眼科医院や眼鏡店でも、赤色光治療を受けることができます。
現在のところ、赤色光治療は保険適用外ですが、一部の眼科医院や眼鏡店では、トライアルや割引サービスを提供しているところもあります。
赤色光治療を受ける際には、以下の点に注意が必要です。
赤色光治療は、近視の進行を防ぐための新しい治療法として注目されています。今後、さらなる研究によって、その有効性と安全性が確認されれば、より広く普及していくことが期待されます。