昨今、国策で、原子力発電に注力することがアナウンスされました。
中でも、小型原子炉(SMR)の開発が進みそうです。
小型原子炉(SMR:Small Modular Reactor)とは、出力が比較的小さく、パッケージ(モジュール)で製造される次世代原子炉のことを指します。
IAEA(国際原子力機関)の定義によれば、出力が30万kW以下とされ、主流の大型炉(100万kW超)に比べると3分の1ほどの規模となります。
中でも、5,000kWほどのものもあり、マイクロ原子炉と呼ばれています。
原子力発電は、原子炉の中でウランが核分裂するときに出る熱で水を沸かして蒸気をつくり、その蒸気の力でタービンを回して発電しています。
そこで、原子炉を冷やす必要があるのですが、大型炉は、ポンプで水を汲み上げねばならず、電力を失った時に、メルトダウンの危険性があります。
一方、小型原子炉(SMR)ならば、原子炉全体を冷却プールの中に沈めておくことができるので、安全性が高まります。
小型原子炉(SMR)は、工場で組み立てて、現地へ運ぶので、品質管理がしやすく、工期も短くできます。
原子力施設には、核兵器への転用を防ぐための核不拡散の原則があります。
その点、小型原子炉(SMR)ならば、廃炉にする際に、モジュールごと撤去することができるので、解体して、核兵器を作られる心配がありません。
原子炉は、発電時に排出される熱を使って、水素を作ることが可能です。
こうして作られた水素は、イエロー水素と呼ばれ、研究開発が進んでいます。
2007年創業のニュースケール・パワー社は、2029年にもSMR1号機が運転開始すると言われています。すでに、米国原子力規制委員会(NRC)の型式認証を取得済みで、建設を待つだけです。
同社は、出力7.7万kWの小型原子炉を最大12基並べて運転する計画で、合計出力100万kW弱と、大型原子炉に近い規模となります。
同社には、米国エネルギー省が4億ドル(約450億円)を出資するほか、日本の日揮ホールディングス(0.4億ドル)とIHI(0.2億ドル)も出資し、原子炉格納容器など中核部材の開発や建設工程の管理などで協力体制をしいています。
日立製作所は、GEとの合弁会社(GE日立ニュークリア・エナジー)で、SMRであるBWRX-300を開発中です。
BWRX-300は、出力30万kWで、「沸騰水型軽水炉(BWR)」というタイプです。福島第一原発と同じ形式であるものの、従来よりも構造を単純化することにより、大規模事故の発生リスクを回避しています。
GEと日立は、2028年ごろの実用化を目指して、NRCに安全審査項目に関する技術レポートなどを提出済みですが、まだ型式認定はおりていません。またカナダでの建設も視野に入れてます。
GEと日立は、PRISM(Power Reactor Innovative Small Module)というタイプのSMRも開発しています。
PRISMは、原子炉の冷却に水ではなく、ナトリウムを使った原子炉です。ナトリウムを原子炉に循環させることで高温のナトリウムをつくり、お湯を作って、原子炉を回します。そのため「高速炉」とも呼ばれ、従来の原子炉と比べて廃棄物の有害度が低く、廃棄量も少ないです。また、使用ずみ核燃料から取り出されるプルトニウムを燃料として使えるといった特徴を持ちます。
米国エネルギー省は、PRISMをベースとした出力30万kWの多目的試験炉(VTR)をアイダホ国立研究所に建設し、2030年までに運転開始をする計画です。
三菱重工業の開発するSMRは、3万kWから30万kW級です。
設計はすでに完了しており、熱交換器などの主要機器を原子炉容器内に入れて、一体化させることで、非常にシンプルな小型原子炉を実現しました。
この原子炉が実用化されると、離島や船舶の電源に応用することが可能になります。
三菱重工業は、冷却材に、ヘリウムガスを使う高温ガス炉(HTTR:High Temperature engineering Test Reactor)の開発も進めています。ヘリウムを使うことで、高圧の水よりも高い熱を効率よく取り出すことができるという利点があります。実用化にはまだ時間がかかりますが、1,000℃の高温ヘリウムを得ることができれば、発電効率が上昇し、さらにこの熱源を使って、効率よく水素をつくることができると期待されています。
海外電力調査会によると、世界では73基のSMRが開発中です。
ロシアは、世界で唯一、SMRを実用化しました。2020年5月、SMR2基を搭載した海上浮体式原子力発電所(FNPP:Floating Nuclear Power Plant)の運転を開始しました。
高市・岸田氏ゲキ推しの小型モジュール式原子炉(SMR)について解説する!
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