メタバースを一言で言うと、「3次元の仮想空間」です。
メタバース(metaverse)は、「meta(高次の、超)」と「universe(世界、宇宙)」を組み合わせた造語です。
メタバースは、以下の点で、従来の仮想空間とは違います。
ユーザーは、仮想現実(VR)のゴーグルを着けたりして、3次元の仮想空間内のアバターを操作します。
将来的には、ゴーグルなしで、3次元の仮想空間を楽しむことができそうです。
3次元になると、人や物の特徴がよく伝わり、エンターテイメントやビジネスなどでも、有用性が増します。
発想自体は、従来からありましたが、コンピューターの処理速度の向上とインターネットの通信速度の向上などによって、実現した技術です。
従来の中央集権型ネットワークから、ブロックチェーン技術を用いた分散型ネットワークになったことで、システムの信頼性・安定性が増します。
メタバースでは、仮想通貨を用いて、アイテムや土地などの取引が行われます。ビジネスに直結しますし、エンターテインメントとして遊んでも、それをお金に替えることが可能になるのです。シムシティで作った街を売るような感じでしょうか。
これらは、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)により、お墨付きを与えられます。NFTは、「デジタルデータにつける鑑定書などの印」のことです。
あいおいニッセイ同和損害保険は2月から企業向けに、仮想空間「メタバース」上のリスクを補償する保険を売り出す。サイバー攻撃で個人情報が流出した際の賠償費用などを補償する。メタバース上の事業で起きた損害をカバーする保険は国内では初めてとなる。
2023年2月6日:日本経済新聞
個人向けもできそうですが、相手が分からないと不正が起きたりしそうですね。
サイバーエージェントは年内にも人工知能(AI)で動画広告を量産する。3次元(3D)のタレントの分身(アバター)を活用し、視聴者の好みなどに応じてしぐさやセリフなどの演出を作り分ける。バナー広告では配信先に応じて異なるデザインやキャッチコピーをAIが生成し広告効果を高めてきた。仮想空間(メタバース)の普及もにらみ動画広告でもAI活用を本格化させる。
2023年1月31日:日本経済新聞
AIが、広告のシナリオを作り出して、広告自体に面白いストーリー性を出せるなら、広告の動画自体が、メインになることもあり得ますね。その場合は、ステマにもならないでしょう。
いま、メタバースが話題だが、2007年から仮想空間で自閉スペクトラム症の人たちと交流し、調査・研究をおこなっているニューヨーク在住の日本人社会学者がいる。ニュー・スクール大学大学院教授の池上英子だ。
池上は、仮想世界「セカンドライフ」での彼らとの交流を通して、通常の方法では知り得なかった彼らの内面世界を知ることになる。彼らが生まれながらに視覚、聴覚、触覚といった情報を過剰なまま取り込んでいる強烈な脳内世界をかいま見ることになったのだ。
2017年、池上はその体験を詳細に綴った『ハイパーワールド:共感し合う自閉症アバターたち』(NTT出版)を上梓し、NHKでも現地取材に基づくドキュメンタリーが放送されなど話題となった。そんな池上がいま、日本で多くの人に知ってほしいと思っている概念が「ニューロ・ダイバーシティ」。自閉スペクトラム症などのありかたが脳のひとつの個性であり、神経回路の多様性こそ人類の発展にプラスになるという考え方だ。
アスペルガーの人はシステム化に優れ、分析に秀でている人が多いと言われています。また周囲に同調せず信念・嗜好を貫く態度も、デジタル時代のビジネスと相性が良いのです。90年代〜2000年代、インターネットとコンピューターが社会の隅々に行き渡り、また脳神経科学が急速に発展してきて脳の神経構造の多様性についての理解が広まり、「ニューロ・ダイバーシティ」の考え方が広まりました。
さらに、自閉スペクトラム症の人々を「視覚型」「パターン型」「言語型」などの特性に分類し、それぞれ優位な才能があるにも関わらず、社会的なコミュニケーションが苦手といった様々な特性のせいでの不遇な扱いを懸念し、いま世界は彼らの才能と共に働くことが求められている、と強く述べています。
歴史上、ほとんどの大きなイノベーションや文明的に画期的な新発見は、非定型的な感覚・知性をもった個人の力が関わっていることが多いのです。
もちろん、発達障害の人たちは、高機能自閉症の人に限っても誰もが天才ではありません。ほとんどの人は生まれつき感覚や認知方法が違うため、生活で困難を感じている人々です。しかし、この違い自体は、環境が変われば実は強みになる場合、少なくともその可能性があります。こうしたニューロ・ダイバースな人々とその可能性を排除してしまうことは、社会にとって大きな損失です。
イノベーションが起こる環境について考えるとき、地球にとって生物多様性が大事なように、1)「違い」をそのままリスペクトすること。そして、2)それらが節度を持って交流したり混じりあったり、協同して仕事をしたりする様々な「場」があり、自らとは違う「知」のあり方に触れる機会が多いこと。その2つの側面がとても大事なのではないかと思っています。
私は、渡米当初まったく英語ができず苦労しましたが、日本と異なる文化のなかで「泳ごう」としてもがいた経験が、自分の可能性を思いもかけない方向と深さで確実に広げた、という感覚があります。
さらに自閉スペクトラムの人々との仮想世界での出会いは、文化や言語という違いよりさらに深い、そもそも生まれつき「世界の見え方」が違う人たちとの交流でした。
その経験は、私のこれまでの価値観を揺さぶり、大きく成長させてくれました。アバターを介した仮想空間でなければ、近づく勇気もなければ、経験できなかったことだと思います。
われわれは誰もが自分の生まれついた感覚知覚・認知特性、育った文化環境という色眼鏡を通して世界を見ている。その繭のなかにいれば楽ですが限界があります。
殻を破るには、違う人々と深く交流するしかない──異文化のなかで暮らし、さらに仮想世界で自閉スペクトラム症の人たちと交流する中で、強く感じたことです。
いま、メタバースが話題ですが、さまざまな感覚を持っている人たちに、どのように最適化されて、その人の神経回路に合った情報の発信・受信ができる世界になるのか。つまり当事者の人々の創造性や情報発信を助けるメディアになるか。
もしそれが今のインターネットのように、次世代のインフラストラクチャーになるとすれば、多数派の真ん中の見方だけに最適化したメタバースにはなってほしくない。いろいろな世界の見方をする人たちが、居心地が良い形で交流できる場をつくる可能性を追求してほしい。いまの日本にとっても、そういう「場」をつくれるかどうかが、とても重要になってくるのではないでしょうか。
2022年12月12日:Forbes
メタバースと翻訳ソフトが、日本人の多様性の助力になるかも知れませんね。
NTTドコモは28日、巨大な仮想空間「メタバース」事業の新会社「NTTコノキュー」を設立したと発表した。NTTグループのメタバース関連の事業を集約し、個人・法人向けのサービス開発を進める。10月1日に事業を始める。
28日、都内で説明会を開いた。主な事業内容はメタバース、実在の製品などを仮想空間で再現する「デジタルツイン」、VRゴーグルなど「XRデバイス」の3つになる。メタバースの入り口になる仮想現実(VR)ゴーグルの開発に着手し、ネットワークと組み合わせてサービス提供できる体制をつくる。
2022年9月28日:日本経済新聞
色々な会社が参入してきて、活気付きますね。
東京大学は23日、工学の教育プラットフォーム「メタバース工学部」を開講した。ソニーグループやリクルートなど6社と連携しており、同日開催した仮想空間「メタバース」上での式典では、東大や企業の関係者らがアバター(分身)で講演した。産学が一体となり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を担う人材を育てる。
メタバース上の式典では、アバター姿の東大の染谷隆夫工学部長が「メタバース工学部は中高生や社会人を含む意欲あるすべての人にとっての学びの場だ」とあいさつ。
メタバース工学部では、東大の研究者らが教員となり、中高生向けにオンラインなどで工学の魅力を伝える。メタバース空間の作成のほか、飛行機タイプのドローンの製作、未来の原子力発電のデザインなどの演習を実施する。
大学で工学を学んだ後の就職先といったキャリア形成に関する情報を発信するサイトも構築する。社会人向けには人工知能(AI)や次世代通信など4つのコースを用意する。
2022年9月23日:日本経済新聞
大学生だけに限られる場ではないのですね。
長らく臆測が飛び交っていたメタのハイエンドVRヘッドセット「Project Cambria」が10月にもリリースされる見込みだ。最低価格は800ドル(約11万円)とみられ、フラッグシップモデルのQuest 2の2倍以上。一方、コンパクト化、画質の向上、アイトラッキングやフェイストラッキング機能の搭載など、Quest 2から大きな飛躍があると期待されるモデルだ。
2022年9月21日:ビジネス+IT
ヘッドセットをつけた人が、街中を歩くなんて姿も見られるかも知れませんね。
8月に開かれた中学3年生向けの特別講座。教室に座っているのは、生徒の分身の「アバター」たちです。花の髪飾りやイヤリングをつけてみたり、髪の色をグレーにして、ひげを生やしてみたりと、生徒たちは思い思いの格好で授業に臨んでいました。
私は現実の自分に似せようと仕事着のアバターを作りましたが、メタバースの授業に参加した生徒たちに聞いてみると「日常生活ではできない茶髪にしてみた」とか「性別を変えてみた」という声もあり、いつもと違う自分への変身を楽しんでいました。
長田校長「集中力が全然違う。聞くと返事もするし、発言もするし、ふだんやっている授業とはだいぶ違う感覚を受けます。普通のオンライン授業だと生徒が受け身になりやすいと思いますが、メタバースの空間にいるとだんだん自分から能動的に動くように意識が変わっていく感覚が出てくるんじゃないか」
2022年9月6日:NHK
不登校の生徒も参加できる点が良いという話も聞きました。
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