ファンドのネットゼロ排出とは？日本と海外の事例

はじめに

ファンドのネットゼロ排出とは、ファンドが保有する資産から排出される温室効果ガス（GHG）の排出量を、排出権の購入や植林などの方法で相殺することで、実質的にゼロにするということです。日本においても、2022年10月に金融庁が「金融分野の脱炭素化に向けたロードマップ」を公表し、2050年までに金融資産のネットゼロ排出を実現することを目指すことを打ち出しました。日本と海外の事例も紹介。

目次

ファンドのネットゼロ排出とは

ファンドのネットゼロ排出とは、ファンドが保有する資産から排出される温室効果ガス（GHG）の排出量を、排出権の購入や植林などの方法で相殺することで、実質的にゼロにするということです。

ファンドのGHG排出量は、主に以下のような要因によって算出されます。

• ファンドが保有する株式や債券の発行会社が排出するGHG
• ファンドが保有する不動産やインフラなどの資産の運用に伴うGHG
• ファンドの運用に伴うGHG（事務処理や出張など）

ファンドのネットゼロ排出を実現するためには、以下の2つの方法があります。

• 排出量の削減

投資先企業のGHG排出量を削減するために、ESG投資やESGスコアなどを活用して、脱炭素化に取り組む企業に投資するなどの方法があります。

• 排出量の相殺

排出量を削減できない部分については、排出権の購入や植林などの方法で相殺することになります。

ファンドのネットゼロ排出は、気候変動対策の観点から重要度が高まっています。2022年には、世界の資産運用会社のうち、約9割が2050年までにネットゼロ排出を達成するという目標を掲げています。

日本においても、2022年10月に金融庁が「金融分野の脱炭素化に向けたロードマップ」を公表し、2050年までに金融資産のネットゼロ排出を実現することを目指すことを打ち出しました。

ファンドのネットゼロ排出を実現するためには、投資家がESG投資やネットゼロ排出を達成するファンドへの投資を増やすことが重要です。

事例

ファンドのネットゼロ排出の事例としては、以下のようなものが挙げられます。

• 排出量の削減に注力するファンド

例えば、ブラックロックの「iShares Global Clean Energy ETF」は、再生可能エネルギーやエネルギー効率化に取り組む企業に投資するファンドです。このファンドは、投資先企業のGHG排出量を削減することで、ネットゼロ排出を実現しています。

• 排出量の相殺に注力するファンド

例えば、BNPパリバの「BNP Paribas Carbon Neutral Fund」は、排出量の削減が難しい企業にも投資するファンドです。このファンドは、排出量の相殺として、排出権の購入や植林などの方法を活用しています。

• 運用に伴うGHG排出量の削減に取り組むファンド

例えば、野村アセットマネジメントの「野村アセットマネジメント・ジャパン・ネットゼロ・ファンド」は、運用に伴うGHG排出量の削減に取り組むファンドです。このファンドは、オンライン取引やリモートワークなどの方法で、運用に伴うGHG排出量を削減しています。

日本においては、2022年10月に金融庁が「金融分野の脱炭素化に向けたロードマップ」を公表し、2050年までに金融資産のネットゼロ排出を実現することを目指すことを打ち出しました。これを受けて、日本の資産運用会社でも、ネットゼロ排出を達成するファンドの開発や提供を積極的に進めています。

例えば、大和アセットマネジメントは、2023年3月に、2030年までに運用資産の温室効果ガス排出量を50%削減し、2050年までにネットゼロを達成するという目標を発表しました。また、同社は、2023年10月に、ネットゼロ排出を達成する「大和アセットマネジメント・グローバル・ネットゼロ・ファンド」を発売しました。

今後も、ファンドのネットゼロ排出は、ますます重要度が高まっていくと考えられます。

金融分野の脱炭素化に向けたロードマップとは

金融庁は、2022年10月20日に「金融分野の脱炭素化に向けたロードマップ」を公表しました。このロードマップは、2050年までに金融資産のネットゼロ排出を実現することを目指し、金融機関が脱炭素化に取り組むための指針となるものです。

ロードマップは、以下の3つの柱から構成されています。

• 金融機関による排出量の削減

金融機関自身が保有する資産や業務から排出されるGHGの排出量を削減することを目指します。具体的には、再生可能エネルギーの導入や省エネ対策、業務プロセスの改善などの取り組みを進めます。

• 金融機関による投資先企業の排出量の削減

金融機関が融資や投資を行う企業のGHG排出量を削減することを目指します。具体的には、ESG投資や投融資先とのエンゲージメントなどの取り組みを進めます。

• 金融機関による脱炭素化支援

金融機関が脱炭素化に取り組む企業や事業を支援することを目指します。具体的には、脱炭素化関連の金融商品・サービスの提供や、脱炭素化に関する情報提供などの取り組みを進めます。

ロードマップでは、金融機関に対して、以下の4つの具体的な行動を促しています。

• 2025年までに、金融資産の温室効果ガス排出量の削減目標を設定すること
• 2030年までに、金融資産の温室効果ガス排出量の50%削減を達成すること
• 2050年までに、金融資産のネットゼロ排出を達成すること
• 2050年までに、金融機関自身による排出量の削減を達成すること

金融庁は、ロードマップに基づき、金融機関の脱炭素化に向けた取り組みを支援していく方針です。

ロードマップの公表を受けて、金融機関は、脱炭素化に向けて、以下の取り組みを進めています。

• 排出量の削減目標の設定
• 脱炭素化関連の金融商品・サービスの提供
• 脱炭素化に関する情報提供

今後も、金融機関の脱炭素化に向けた取り組みは、ますます加速していくと考えられます。

まとめ

ファンドのネットゼロ排出は、顧客の利益に結びつかないと、難しい一面がありますが、世界中の取り組みによって、実現してほしいですね。

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