ゲノム編集が人間に施された実例をまとめました。世界で、2例が報告されています。2018年11月の中国のデザイナーベビー・ルルとナナのその後。2021年12月のアメリカでの鎌状赤血球症の治療患者。また、日本のデザイナーベビー誕生の可能性。コロナに感染しないヒトを誕生させる。
2023年11月12日現在、人間にゲノム編集を施した実例は、世界で2例あります。
1例目は、2018年11月に中国の南方科技大学の賀建奎氏が発表した、HIV耐性のある双子の誕生です。賀氏は、受精卵のゲノム編集によって、HIVが細胞に侵入する際に利用する細胞側のタンパク質の遺伝子を無効化しました。
この実験は、倫理的な問題から世界中から批判を受けました。また、賀氏は中国当局から研究の停止命令を受け、その後、中国科学院から除名されました。
2例目は、2021年12月にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究グループが発表した、鎌状赤血球症の治療です。研究グループは、患者の骨髄幹細胞のゲノム編集によって、鎌状赤血球症の原因となる遺伝子の変異を修正しました。
この実験は、臨床試験として実施され、鎌状赤血球症の患者の血液中の鎌状赤血球の割合が大幅に減少したことが確認されました。
この2例以外にも、人間の遺伝子を編集する研究は世界中で進められています。しかし、安全性や倫理性などの問題から、臨床応用には慎重な検討が必要とされています。
日本では、2022年に「ゲノム編集等の生命科学技術の研究開発及びその成果の社会実装に関する法律」が施行されました。この法律では、ヒト胚を対象としたゲノム編集研究は原則禁止とされています。ただし、難病の治療や予防を目的とした研究については、一定の条件を満たした場合に限り、厚生労働大臣の許可を得て実施することができます。
2018年11月に中国で誕生した、賀建奎氏がゲノム編集によってHIV耐性を持たせた双子の女の子、ルルとナナのその後は、現在も公表されていません。
賀氏は、双子の誕生から約1年後の2019年11月に、中国当局から研究の停止命令を受け、その後、中国科学院から除名されました。賀氏は、2020年12月に、中国の裁判所から3年間の懲役刑を言い渡されましたが、2022年3月に早期釈放されました。
賀氏は、釈放後も双子の様子について公表しておらず、両親の所在も不明です。そのため、双子が健康に成長しているのか、どのような教育を受けているのかなど、その後の状況は明らかになっていません。
ただし、賀氏は釈放後のインタビューで、双子の健康状態は良好であり、現在も医学的な観察を受けていると語っています。また、双子の両親は、賀氏の研究に同意した上で、双子の誕生に協力したことを明らかにしています。
このように、双子のその後については、さまざまな憶測が飛び交っていますが、確かな情報は伝わってきていません。今後、双子の両親や賀氏が、双子の様子について公表する可能性はありますが、現時点では、双子のその後は謎に包まれたままです。
一方、賀氏の研究は、世界中で大きな議論を呼び起こしました。この研究は、ゲノム編集技術の可能性を示す一方で、倫理的な問題も浮き彫りにしました。
この研究を受けて、各国では、ヒト胚を対象としたゲノム編集研究に関する規制が強化されました。日本でも、2022年に「ゲノム編集等の生命科学技術の研究開発及びその成果の社会実装に関する法律」が施行され、ヒト胚を対象としたゲノム編集研究は原則禁止となりました。
今後、ゲノム編集技術がどのように発展していくのかは不透明ですが、その可能性と倫理的な問題について、慎重な議論が必要とされています。
2023年11月12日現在、日本でデザイナーベビーの誕生する可能性は、原則として低いと考えられます。
理由は、以下のとおりです。
ただし、ゲノム編集技術は急速に進歩しており、将来的には、日本でもデザイナーベビーの誕生が実現する可能性は否定できません。
例えば、以下のような状況になれば、デザイナーベビーの誕生が現実化する可能性があります。
今後、ゲノム編集技術の開発や社会の変化がどのように進んでいくのか、注視していく必要があります。
現時点では、ゲノム編集でコロナに感染しないヒトを誕生させることは、技術的に可能であると考えられます。
コロナウイルスが細胞に侵入する際には、ACE2というタンパク質を利用します。このタンパク質は、肺や気管支などの粘膜表面に存在しています。ゲノム編集によって、ACE2タンパク質の働きを抑制または無効化することができれば、コロナウイルスの感染を防ぐことができると考えられます。
実際に、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、マウスのACE2遺伝子を編集することで、コロナウイルスの感染を防ぐことができることを確認しています。
ただし、ヒトへの適用には、以下の課題があります。
これらの課題を克服するためには、さらなる研究が必要です。
また、倫理的な問題も指摘されています。例えば、コロナに感染しないヒトを誕生させることが、社会の格差や差別を助長するのではないかという懸念があります。
これらの問題を解決するためには、社会的な議論が必要とされています。
今後、ゲノム編集技術の開発や社会の変化がどのように進んでいくのか、注視していく必要があります。
病気の治療のためなら、今後も、ゲノム編集を人間に施すことはありそうです。
その一環としてなら、ヒト胚を対象としたゲノム編集をする可能性もあるかも知れません。
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