2022年9月22日、10月21日、政府・日銀による為替介入がありました。その一部始終をドキュメントタッチで、追ってみました。
時刻 | 出来事 |
2022年9月14日 | 鈴木財務大臣が、介入について、「やるときには間髪入れずに瞬時にやる」と発言 日銀の「レートチェック」を実施 |
2022年9月20日 | 「為替介入は、できる限りしないのが原則」と専門家の意見 |
2022年9月22日 | 日銀政策金利発表。金融緩和を継続 |
11:53 | 約24年ぶりに一時1ドル=145円台 |
13時頃 | 神田財務官「為替介入はまだしていない。しかし、いつでもできるスタンバイの状況だ」 |
15:30 | 黒田日銀総裁会見 「当面、金利を引き上げることはない」為替介入について、「財務大臣の所管なのでコメントすることは差し控える。為替の先行きについて言うと大体失敗しますのでなんとも申し上げられない」円安に関して政府から日銀に協力の要請があった場合の対応を問われたのに対して、「そういったことは予想もしていないし、そんなことはないと思う」 |
16:30 | スイスが中銀が、マイナス金利から脱却 |
16:35頃 | 黒田総裁会見終了 |
16:37 | ドル円が、この日の最高値をつける |
17:02 | 高値:145.846円:介入直前の高値 |
17:03 | 介入開始? 高値:145.832円 安値:145.061円 神田財務官「足元の為替市場では、投機的な動きを背景に急速で一方的な動きがみられている。政府としてこうした過度な変動を憂慮しており、先ほど断固たる措置を実施した」記者団から「断固たる措置は市場介入か」と問われたのに対して「そうです」 |
17:44 | 安値:140.592円:一旦の最安値 |
21:45 | 安値:140.341円:2022年9月22日の最安値 |
145円を突破してからは、まさに投機筋と思われる買いが入って、じわじわと上げていました。
そして、この間、黒田日銀総裁の記者会見をしていたのです。
記者会見は、15時半から始まり、16時半頃終わりました。
16時半には、日本と同じマイナス金利だったスイス中銀の利上げも。
介入が始まりました。
介入は、いきなり何兆円も円買いをするわけではなく、徐々に円高になっていきました。
一応、手仕舞いのチャンスをくれていたかのようでした。
一旦、踊り場があって(この時、神田財務官の会見がありました)、また円高になっていきました。
140円台になって、じわじわと反転して、しかし、それから上昇を始めました。
時刻 | ドル円相場 | コメント |
11:55 | 高値:145.398円 安値:143.515円 | 日銀政策金利発表 |
16:30 | 高値:145.818円 | スイスが中銀が、マイナス金利から脱却 |
16:37 | 高値:145.903円 | この日の最高値 |
17:02 | 高値:145.846円 | 介入直前の高値 |
17:03 | 高値:145.832円 安値:145.061円 | 介入開始? |
17:44 | 安値:140.592円 | 一旦の安値 |
21:45 | 安値:140.341円 | 2022年9月22日の最安値 |
時刻、ドル円相場とも、証券会社等のデータによって、多少の差異があります。
20:35頃から、再び下落を始めました。
21:45に、9月22日の最安値をつけました。
それ以降、もみ合いが続きました。
23日の18:55と20:10に、2度、大きく下げましたが、介入の報道はありませんでした。
ドル円は、全体的に上昇基調になってきました。
為替介入は、唐突には行われませんでした。「レートチェック」であったり、「スタンバイの状況だ」という発言であったり、何かしらのニュアンスを伝えてから行われました。
5円ほど下がって、一旦底を打ち、上昇を始めたのですが、第2波の下げが来ました。
それからは、全体的に円安方向になリました。
為替介入のあった週のイベントカレンダーです。
ドル買い介入の影響が、メキシコペソにも大きく及びました。
特徴として、底値からの反発力が、ドル円に比べて弱かった印象があります。
それでも、この後、値を戻しました。
根強い円売り圧力はあったものの、介入の警戒感から、上値を抑えられていました。
今週は、ドル円や介入というよりは、欧州の経済不安によって、ユーロが乱高下しました。
その影響で、ドル円も比較的大きく動きました。
なお、鈴木俊一財務相は3日午後、円買い介入後の高値を更新したドル円の動向について「強い緊張感を持って注視している」とし、「必要に応じて断固たる措置を取ることに変わりない」と述べました。
今までは、「断固たる措置」という言葉が出たら、介入と言われていたようですが、結局、この週は、この言葉が出ても、介入はありませんでした。
その他、高値では、原因不明の暴落が起きて、上値追いとはなりませんでした。
週末は、米国の雇用統計で、乱高下して、割と高めで引けました。
米国CPIが、思った以上に強かったことで、円安が止まりません。
為替介入に関しては、もう口先介入では効かなくて、実際に介入もしている可能性がありますが、政府・日銀は、明言を避けています。
150円が、節目とも言われているので、また大きな介入がなされる可能性もあります。
※のちに、13日に、日銀が「覆面介入」をしたようだと報じられました。
この期間中、何度か急に円高になる局面があり、覆面介入だと言われていました。
それ以外にも、極端にもみ合う時間帯があって、それも、一種の介入の可能性もあります。
その両者とも、政府・日銀は、介入とは言明していません。
そして、21日の深夜の介入がありました。
今回は、2022年10月21日の17:00頃から、一気に円安になったので、介入があるだろうと思われました。
21:00には、高値151.946円をつけました。
しかし、動きがあったのは、23:35頃でした。
2022年10月22日1:00には、安値146.197円をつけました。
その後、148円半ばまで上げて、4:10に、二番底の146.630円をつけました。
今回の介入は、比較的流動性の低い時間帯に行われ、投機筋には痛手だったようです。
なお、一部報道では、「144円台まで円高になった」とありましたが、そのチャートは確認できませんでした。
このチャートからも分かるように、米国債10年物の利回りは、介入した頃には、ピークアウトしていました。
一説には、米国の専門家らが、「利上げペースを緩める」ことに言及したことによります。
そのため、放っておいても、ある程度円安は、抑えられたのではないかと、個人的には思います。
だから、今回の深夜の介入には、驚いたわけです。
今回は、15分足で、如何に連続して介入が行われたかをご確認ください。
実際には、土日を挟んでいますが、まさか、このタイミングで介入をするとは思いませんでした。
政府・日銀は、投機筋に対峙すると言って、介入をしていますが、どうなんでしょう?
24日の介入が効いた週でした。
それもそうですが、米国債10年物の利回りが低くなった週でもありました。
後から思うと、この週が、ピークだったということになるのでしょうか。
現時点で、FRBは、11月に0.75%、12月に0.5%の利上げをすると言われています。
利上げペースの鈍化を織り込んだ格好になりました。
前半は、介入を警戒して、上の方に張り付いていました。
11月1日は、利上げペースが鈍化することを織り込んで、随分と円高方向に動きました。
3日の3:00には、FRBの政策金利が0.75%と発表されました。利上げペースが鈍化しそうということで、大きく円高になりました。
しかし、3:30からのパウエル議長の会見では、金融引き締めが、長く大きなものになるという話があって、大きく円安方向になりました。
週後半は、米国の雇用統計の結果で、利上げペースの鈍化が再燃して、円高方向に動きました。
11月10日22:30の米国CPIで波乱が起きました。数値自体は、7.9%予想のところ、7.7%という結果で、サプライズなんですが、米国の金融政策の曲がり角と判断されたようで、一気に円高になりました。
利上げペースが鈍化すると予想されていますが、利上げ自体は、まだまだ続きます。
今後、また円安方向に行くのか、予想がつきません。
今週は、比較的安定した週でした。
12月15日の米国政策金利発表までは、この調子かも知れませんね。
ただ、FRBのタカ派発言が、連発しているので、円安方向に動くかも。
一方で、利上げペースの鈍化も確実な情勢で、円高方向への動きも大きいものがあります。
食料品や家賃の上昇など記録的なインフレが続くアメリカ。13日に発表されたアメリカの8月の消費者物価指数は、前年の同月と比べて8.3%上昇し、2カ月連続で上げ幅が縮小したものの、市場予想の8.1%を上回った。
市場では、インフレ抑制のため今後もFRBが大幅な利上げを継続するとの見方が広がり、低い金利の円を売り、利回りが見込めるドルを買う動きが加速。一時1ドル=145円に迫った。
共同通信によるとこの日、日銀は市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施。為替介入の実施に備えた動きとみられている。
Q.本当に為替介入は実行されるのでしょうか?
木内:可能性が高いとも言えないし、為替介入のハードルは高いと思う。実際に、鈴木財務大臣も為替介入も排除せずと明確に言うようになったのは以前とは違うのだと思う。主要国が為替介入をすると新興国が真似して為替を操作してしまうことになるので、できる限りしないのが原則。ただ、日本としては手の打ちようが無くなったら為替介入の可能性はゼロではない。
ABEMA TIMES
およそ24年ぶりに一時1ドル=145円台になったことをうけて、先ほど神田財務官が財務省で取材に応じ、「為替介入はまだしていない。しかし、いつでもできるスタンバイの状況だ」と述べました
「日銀政策決定会合だけでなくFOMCもはさんで、やはり相場が大きな乱高下をしております。以前から申し上げています通り、為替相場の過度の変動、無秩序な動きは家計であろうが、企業であろうが、非常に悪影響を及ぼすものであって、容認できるものではありませんので、過度の変動の場合にはあらゆる手段を排除することなく、適切な対応をとる用意はできていますし、そのように行動することを考えております」
神田財務官は午後1時半すぎに、財務省でこのように述べた上で、為替介入の有無について問われると「ステルスで(介入を)やる場合も正直あるので、介入の有無について必ずしもコメントする立場ではない」とした上で、「正直申し上げてまだやっておりません。しかし、いつでもやる用意はございます」と述べました。
為替市場の状況次第で、いつでも介入する用意があることを改めて強調しました。
TBS
日銀の黒田総裁はきょうの記者会見で、現時点では金融緩和を継続して経済を下支えし、賃金の上昇を伴う形で物価目標を安定的に実現することが必要だとしたうえで、「当面、金利を引き上げることはない」という考えを強調しました。
急速に進む円安について、黒田総裁は冒頭の発言で「経済をめぐる不確実性は極めて高い。金融・為替市場の動向や、わが国経済・物価への影響を十分注視する必要がある」と述べました。
冒頭発言の最後に、金融政策の方向性について「2%の物価安定の目標の実現を目指し、必要な時点まで金融緩和を継続する。必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と述べました。
記者会見で外国為替市場で急速に進む円安については、「逆方向の要因も含めさまざまな要因があるにもかかわらず円安が進んできたことは、一方的であり、投機的な要因もあるのではないかと考える。こうした円安の進行は、企業の事業計画の策定を困難にするなど、先行きの不確実性を高め、わが国経済にとってマイナスであると思います」と述べました。
また、黒田総裁は「今は経済を支えて賃金の上昇を伴う形で物価上昇の目標を持続的に安定的に実現することが必要であって、金融緩和を継続することが必要であると考えている。必要があれば追加的な金融緩和措置を講じる。金融緩和を続けることには全く変わりないので、当面、金利を引き上げることはないと思っている」と述べました。
マイナス金利政策については、「現在のが何か大きな副作用や問題を起こしていることはないと思う。違う国と比較してあちらのマイナス金利がなくなったからといって、なくす必要があるとはならないと思う」と述べました。
このほか、「為替の変動についてはさまざまな要因がある。日米の金利差が市場で非常に注目されてそれが影響していると言われているが、他の国で金利をかなり引き上げて長期金利がアメリカより高くなっている国も含めて、対ドルでかなり為替が下落している。したがって、今の為替動向を日米の金利差だけで説明したり運用したりするのはいかがかというふうに思う」と述べました。
東京外国為替市場では日銀の黒田総裁が記者会見で、「当面、金利を引き上げることはない」などと発言したことを受けて円を売ってドルを買う動きが加速し、円相場は、記者会見の最中に1ドル=145円台後半まで値下がりしました。
市場関係者は「FRBの参加者による政策金利の見通しが引き上げられ、アメリカでは大幅な利上げが続くことが見込まれている一方で、日銀の黒田総裁が金融緩和を維持する姿勢を鮮明にしたことで、日米の金利差の拡大が強く意識されている」と話しています。
日銀の黒田総裁は「金融政策は為替レートをターゲットにしていない。あくまでも経済、特に物価の動向との関係で為替や金融市場をよく注視していく」と述べました。
為替介入について、「財務大臣の所管なのでコメントすることは差し控える。為替の先行きについて言うと大体失敗しますのでなんとも申し上げられない」と述べました。
また、円安に関して政府から日銀に協力の要請があった場合の対応を問われたのに対して、「そういったことは予想もしていないし、そんなことはないと思う」と述べました。
黒田総裁の記者会見は、通常45分間がめどとなっていますが、22日は、午後4時35分すぎまで、1時間以上続いて、終了しました。
NHK
政府・日銀は、外国為替市場で1ドル=145円台後半まで円安が進んでいることを受けて、急速な円安に歯止めをかけるため、ドルを売って円を買う市場介入に踏み切りました。
政府・日銀によるドル売り円買いの市場介入は、日本の金融危機のさなかに円安が進んだ1998年6月以来、24年3か月ぶりとなります。
この中で神田財務官は「足元の為替市場では、投機的な動きを背景に急速で一方的な動きがみられている。政府としてこうした過度な変動を憂慮しており、先ほど断固たる措置を実施した」と述べました。
記者団から「断固たる措置は市場介入か」と問われたのに対して「そうです」と答えました。
政府・日銀は、いまの円安の動きは、急激かつ一方的で、このまま円安が進んで物価の上昇につながれば、日本経済や暮らしに打撃を与えかねないと判断したものとみられます。
ドル売り円買いの市場介入が行われるのは、日本の金融危機のさなかに、いわゆる日本売りで円相場が1ドル=140円台まで下落した1998年6月以来、24年3か月ぶりとなります。
また、市場介入自体は、東日本大震災があった2011年11月に歴史的な円高に歯止めをかけるために行われた円売りドル買いの介入以来となります。
NHK
先ほどの記者会見で、鈴木財務大臣は、単独での介入かどうか明言は避けつつ、「関係各国とは常日ごろ、連絡を取りあっている」と述べ、事前にアメリカなどとすりあわせを行ったことを示唆しました。
今後、日米が介入をめぐってどういった意思疎通を図っていくかは大きなポイントになりそうです。
金融引き締めを急ぐアメリカと金融緩和を続ける日本という状況は、当面は変わらないため、円安に歯止めをかける効果は限定的だという指摘もあります。
NHK
訪米中の岸田文雄首相は22日のニューヨークでの内外記者会見で、政府・日銀が実施した円買い・ドル売りの為替介入に言及した。今後の対応として「過度な変動に対しては断固として必要な対応をとりたい」と強調した。
「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見逃すことができない」と介入の理由を述べた。「(対ドルの円相場が)1年で30円以上円安に動いたのは過去30年ない状況だ」と話した。
日本経済新聞
為替政策を担当する神田財務官は22日の記者会見で、「手の内をさらすようなことは言わない」としながらも、「今後も必要によってはやる」と述べ、この先も為替市場が大きく変動することがあれば、さらなる介入も辞さない構えを見せました。
ただ、市場介入に必要な国の外貨準備にはかぎりがあるため、際限なく介入を行えるわけではありません。
急速な円安に歯止めをかけるため政府・日銀が市場介入を行ったことについて、アメリカの財務省はNHKの取材に対し「このところ高まっている円相場の変動を抑えるのが目的だと理解している」としています。
記録的なインフレが続くアメリカにとっては日本政府・日銀の介入によって円高ドル安方向に動けば、輸入物価の上昇を通じてさらなる物価高につながるおそれがあるため介入への理解は得られないという見方も出ていましたが、今回はアメリカが事実上、容認した形です。
一方、鈴木財務大臣は、単独での介入かどうか明言は避けていましたが、アメリカの財務省は今回の介入には関わっていないとして日米の協調介入でないことを明らかにしました。
NHK
政府・日銀が外国為替市場で為替介入する際の原資は、円買いと円売りで大きく異なる。円売り・外貨買いの場合は国債発行を通じて国内の金融市場から円を調達し、介入に充てる。政府が市場から資金を調達できる限り、介入の原資は無限と言える。一方で円買い介入の場合は売るための通貨として外貨準備が充てられるため、外貨準備高が上限とされる。
外貨準備は中央銀行や政府が債券や預金、金などの形で保有する外貨建ての資産。日本では政府の外国為替資金特別会計(外為特会)と日銀が保有する。財務省によると日本の外貨準備高は1兆2920億ドル(約180兆円)と、20年前と比べ2.8倍に膨らんだ。過去に実施した介入で買い入れたドルを外貨準備として積み上げてきたためだ。
8月末時点の構成比率をみると、1兆ドル超を米国債を中心とした証券で保有しており、すぐに介入資金として使うことができる海外の中央銀行や国際決済銀行(BIS)などへの預金は1361億ドル(約19兆円)にとどまる。「米国債を売却して介入資金にするのは国際協調の観点からハードルが高い」(国内証券)との指摘も多い。
日本経済新聞
政府・日銀が22日に実施したドル売り・円買い介入は、想定を超えて世界の金融・資本市場にその影響が波及した。介入資金の確保で日本政府保有の米国債が売却されるのではないかとの思惑から米長期金利が上昇したとの指摘もあり、ダウは3万ドルの大台を、26日の日経平均も2万6500円を割り込んだ。
円安阻止に動いたら9月中間決算直前に株価の大幅下落を引き起こした形で、日本の金融機関や事業会社の決算に少なからず打撃となった可能性がある。また、日銀の超緩和策が維持される中でのドル売り・円買い介入は「水とお湯を同時に注入する」ような対応とも言え、介入を繰り返すうちに効果が漸減して「出口」が見えなくなり、泥沼にはまり込む危険性もはらんでいる。
ロイター
政府・日銀が22日に実施した24年ぶりの円買い介入の規模について、市場では約3兆6000億円との推計が出ている。円買い介入としては1998年4月10日の2兆6201億円を超える規模となる。
ロイター
財務省が9月30日に発表した8月30~9月28日の為替介入実績は2兆8382億円だった。9月22日に24年ぶりに実施した円買い・ドル売り介入を反映している。円買い・ドル売りの1日の介入額としては過去最大規模とみられる。
円相場は介入直後の22日夕に5円ほど急騰して1ドル=140円台をつけたあとは再び円安に振れた。わずか1週間で1ドル=144円台の円安水準に戻っており、介入を実施した145円台が迫る。SMBC日興証券の牧野潤一氏は「需給をコントロールする為替介入では通貨のフェアバリューは変わらず、効果は一時的にとどまる」と指摘する。
日本経済新聞
市場介入にあたって政府・日銀が注目していたのは「投機筋」の動きでした。
鈴木財務大臣は、介入にふみきった9月22日の記者会見で、「投機による過度な変動は決して見過すことはできない」と強い口調で警告。
財務省の神田財務官も「ファンダメンタルズ=経済の基礎的条件から外れた投機的な問題だった場合は是正する必要がある」と今回の市場介入を正当化しました。
同じ日、日銀の黒田総裁は、「円安が進んできたことは、一方的であり、投機的な要因もあるのではないかと考える」と述べています。
そもそも「投機筋」「投機的」とは何を意味しているのか。
当局者の1人は、「市場で大量の資金を動かし、短期的な売買を繰り返して利ざやを稼ごうとする投資家のことで、具体的には海外のヘッジファンドなどが想定されている」と答えました。
政府・日銀はさらなる介入も辞さない構えですが、このヘッジファンドは仮に第2、第3の市場介入があっても円安を食い止める効果はないとあくまで強気です。
1ドル=145円を超えて円安が進み、1日の変動幅が「2円、3円」にのぼる場合には市場介入の可能性は十分あるというのが多くの市場関係者の見方です。
ただ、多くのアナリストは、ヘッジファンドなど「投機筋」のいまの関心は、日本よりむしろイギリスに向いているとも指摘します。
NHK
財務省は7日、9月末の外貨準備高が8月末比4.2%減の1兆2380億ドル(約180兆円)だったと発表した。減少率は過去最大となった。外国債券などの「証券」が大きく減った。9月22日の円買い・ドル売りの為替介入は米国債を売却する形で実施した可能性がある。
外貨準備の減少は2カ月連続。減少額の540億ドルも最大だった。ピークだった2021年8月から1割以上減り、17年3月以来の低水準となった。証券が9852億ドルと前月比515億ドル減った。証券が1兆ドルを下回るのは10年8月以来となる。
政府・日銀は円安に歯止めをかけるため、9月22日に円買い・ドル売り介入を24年ぶりに実施した。介入額は2兆8382億円だった。鈴木俊一財務相は7日の閣議後の記者会見で、為替介入に使った資産について「取引の内容に関わるからお答えできない」と述べた。
証券が大幅に減ったことから証券の大部分を占める米国債を換金したうえで円を買った可能性がある。円買い介入にはいつでも自由に使える外貨預金をまず使うとの見方もあったが、9月末の外貨預金は1361億ドルで前月とほぼ同じだった。
米国の金利上昇で米国債の時価評価額が下がったことも外貨準備の大幅減につながった。財務省によると8月末に3.1%台だった10年債の金利は9月末に3.8%台に上がった。ドル高によるユーロ建て資産などのドル換算額の目減りも響いた。
日本経済新聞
鈴木俊一財務相は13日(日本時間14日)の米ワシントンでの記者会見で、対ドルで32年ぶりに147円台後半に下落した円相場について「投機による過度な変動は容認できない。過度な変動には適切な対応を取る」と強調した。為替介入を実施したかについて財務省幹部は「言うときもあれば、言わないときもある」と明言を避けた。
円相場は13日に147円66銭と1990年8月以来32年ぶりの円安水準に下落した直後、1円強戻す場面があった。9月22日に24年ぶりに実施した円買い・ドル売りの介入に続き、再び介入に踏み切ったのではないかとの見方が市場にはある。9月22日には鈴木氏らが記者会見を開き、介入を実施したと明らかにしていた。
10月13日に円安が進んだのは、米消費者物価指数(CPI)が市場予想(8.1%)を上回ったことで、米国の大幅利上げ観測が広がり、日米金利差の拡大を見込む円売り・ドル買いが強まったためだ。日米金利差拡大の背景には日銀の金融緩和政策があるが、会見に同席した日銀の黒田東彦総裁は「日本経済はアメリカに比べて回復テンポが遅い。最も適切な金融政策を考えると引き上げは適切ではない」と語った。
日本経済新聞
ワシントンで12日に開かれていた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、1985年の「プラザ合意」のようなドル高是正のための協調介入を行う兆候が一切見られなかった。ドル高騰の影響を被っている日本などの国々は、厳しい状況が続く。
12日に発表されたG7声明には、日本からの強い働きかけを受けて「最近の急激な変動」を注意深く監視するとの文言が盛り込まれた。
しかし、この警告もそして再度の円買い介入をちらつかせる鈴木俊一財務相の発言もむなしく、円は週末に対ドルで32年ぶりの安値を更新した。
ロイター
日銀は17日、金融機関が日銀内に開設している当座預金の残高に関する統計を公表した。月初の日銀予想よりも1兆円以上減少していることから、市場では、政府・日銀が13日に、実施の有無を明言しないまま金融機関から円を買う「覆面介入」に踏み切ったとの観測が出ている。
政府・日銀は9月22日に、約24年ぶりに円買いドル売りの為替介入を断行したが、円売りに歯止めはかからず、10月13日には1ドル=147円66銭と、約32年ぶりの円安ドル高水準を付けた。直後にいったん1円余り円高に振れたため、一部で介入を疑う声が上がった。
KYODO
神田真人財務官は20日午後、円相場が一時1ドル=150円台に乗せたことを受けて記者団の取材に応じ、「介入をしているか、していないかにはコメントしない」と述べた。円買い介入の原資は「無限にある」と語った。
1ドル=150円台を付けたのは1990年8月以来、約32年ぶり。
ロイター
米国株式市場は急反発。米連邦準備理事会(FRB)が12月の会合でこれまでよりも小幅な利上げを巡り検討する公算が大きいという報道を受け、安心感が広がった。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、FRB当局者の一角からは、近く利上げペースを緩めるべきという声が上がり始めている。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は21日、過度な金融引き締めによる「自発的な景気低迷」を回避すべきとし、利上げペースを緩める時期に差し掛かりつつあるという認識を示した。
シカゴ地区連銀のエバンス総裁も、FRBは成長を抑制して過度に高いインフレを低下させるために、来年初までに4.5%を「やや上回る」水準に政策金利を引き上げ、その水準を維持すべきとの見解を改めて示した。
USバンク・ウエルス・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、トム・ヘインリン氏は「11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%ポイント利上げはほぼ確実となったようだが、(利上げペースの)減速や現状維持の余地が存在する可能性もある」と述べた。
ロイター
ニューヨーク外為市場ではドルが対円で急落し、一時1ドル=144.5円を付けた。市場では、日本政府・日銀が市場介入を行った可能性が指摘されている。1日の下げ幅としては約2カ月ぶりの大きさとなった。
コーペイ(トロント)でチーフマーケットストラテジストを務めるカール・シャモッタ氏は「ここに来て財務省が介入しているようだ。多額のドル売りと、ショートが圧迫され円が急騰しているのが見える」と語った。
日経新聞は22日付の電子版で関係筋の話として、政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったと報じた。
日本の財務省はコメントを避けた。
TDセキュリティーズのイッサ氏は、ロンドンのトレーダーが週末に向けて帰宅する「非常に流動性が低い時間帯」に介入が行われたと指摘。「投機筋に対し可能な限り多くの痛みを与えるよう設計されているようだ」と述べた。
ロイター
週明けの24日の外国為替市場でも午前8時半ごろ、再び1ドル=150円台に迫ったところで、突然、円高方向に振れる動きがあり、円相場はわずか10分ほどで4円以上、値上がりして一時、1ドル=145円台前半まで値上がりしました。
市場関係者は「政府・日銀がいつ介入を行うか分からないという警戒感から神経質な取り引きが続いている。一方で、アメリカと日本の金利差など円が売られやすい状況は変わらないため、介入があったとしても効果は限定的だという見方が多い」と話しています。
鈴木財務大臣は24日朝、財務省内で記者団の取材に応じ、市場介入について「私どもは市場を通じて投機筋と厳しく対じしている。そういう状況を考えてコメントしない」と述べました。
そのうえで24日の外国為替市場で再び円安が進んでいることについて「引き続き高い緊張感をもって為替の動向を注視している。投機によって過度に変動するということは、断じて容認できず、そういうときには必要に応じて必要な対応を取っていきたい」と述べ、今後も必要があれば市場介入も辞さないという姿勢を示し投機筋をけん制しました。
為替政策を担当する財務省の神田財務官は24日午前11時半ごろ、記者団に対し「投機筋によって為替が大きく変動し、過度な変動が国民の生活、ひいては世界経済に悪影響を及ぼすことは容認できない。今まで通り過度な変動、あるいは無秩序な動きに対して、適切な対応を取ることは変わらない」と述べました。
そのうえで神田財務官は「介入をしているかしていないかについては、これまで通り特にコメントは申し上げないという姿勢だ。きょう、何をしているかしていないかということをコメントすることは考えていない」と述べました。
NHK
政府・日銀が21日に実施した円買い・ドル売りの為替介入が5.5兆円規模に達した可能性があることが24日、市場参加者の推計でわかった。日銀が24日に公表した25日の当座預金残高の見通しから推計した。正式には財務省が後日発表するが、9月22日に実施した2.8兆円を大幅に上回り、円買い介入としては過去最大となった可能性がある。
政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入を行うと、民間金融機関が日銀に預けている当座預金から円が国庫に移動し、当座預金の減少要因になる。決済は2営業日後になるため、10月21日の介入結果は25日の当座預金残高に反映される。
日銀が24日発表した25日の当座預金残高の見通しで、為替介入を反映する「財政等要因」による当座預金の減少額は1兆1800億円だった。日銀は月初に4兆3000億円程度の増加を見込んでいた。両者の差額である約5兆4800億円が円買い介入の実施額と推測される。短資会社も4兆2000億~4兆3000億円の増加を予想していた。
21日のニューヨーク外国為替市場では、円相場が一時1ドル=151円90銭台と32年ぶりの安値を更新した。その後、政府・日銀による円買い介入を受けて一時1ドル=144円台まで円高が進んだ。24日の東京市場でも一時1ドル=149円台後半まで下げた後、145円台まで急騰する場面があり、追加介入の観測が浮上している。
日本経済新聞
財務省が31日に発表した9月29~10月27日の為替介入実績は6兆3499億円で、単月の円買い・ドル売り介入として過去最大を更新した。政府・日銀による21日の介入などが表れた。未曽有の円安・ドル高圧力は日米金利差や貿易赤字などの構造要因が背景にある。介入の効果がどこまで続くかは見通せない。
日銀の統計を基に、市場関係者は21日の介入額は過去最大の5兆5000億円規模と推計していた。円は22日未明にかけ一時1ドル=144円台まで7円以上急騰した。一時4円以上円高に振れた24日も6900億~8900億円の円買い介入があったとの観測がある。
財務省が直後に公表した9月22日以外は実施を明らかにしない「覆面介入」だ。21日の介入は関係者が日本経済新聞の取材に実施を認めた。
日本経済新聞
財務省は8日、2022年7―9月期外国為替平衡操作(為替介入)の日次ベースの実施状況を発表した。すでに公表している9月22日以外では円買い介入を実施しておらず、9月末までは覆面介入を実施していないことが統計上、確定した。
同省は8月30日から9月28日の為替介入実績が2兆8382億円だったと9月30日に発表していた。今回公表したのは四半期ごとに遡って介入した日や金額がより詳しく反映されるデータで、9月22日以外に為替介入の実績はなかった。
同時に発表した10月末の外貨準備高は1兆1945億6800万ドルとなり、先月末に比べて434億8800万ドル減少した。
覆面介入に加え、米国債利回りの上昇で外国証券の残高が目減りした。一方、ユーロ高/ドル安となったことや債券の利息収入が上昇要因となり、減少幅は、最大だった9月に続く過去2番目にとどまった。
ロイター
米財務省は10日、外国為替政策報告書を公表した。日本が実施した為替介入について批判せず、「介入は適切な事前協議を経て、極めて例外的な状況にのみ留められるべきだ」と念押しした。為替操作の可能性を検証する「監視リスト」には中国などと一緒に残った。
報告書は半期ごとに公表され、日本が9月に介入に踏み切ってからは初となる。日本について「過度の変動と無秩序な為替レートの動きを理由に、円安のペースを止める目的で介入した」と説明した。為替介入の実績を毎月公表している点を「透明性が高い」と評価した。介入を批判する表現はなかった。
米財務省は日本側が説明した介入の理由を受け入れたうえで「日本は主要7カ国(G7)のパートナーと協議を続けてきた」(高官)とも認めている。報告書が「極めて例外的な状況に限る」という以前から示してきた表現を踏襲したのは、過度な介入にならないようクギを刺すためとみられる。
「監視リスト」には日本と中国のほか、韓国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、台湾が含まれた。前回の報告書に入っていたイタリア、インド、メキシコ、タイ、ベトナムは除外された。不当な為替操作を実施したとして制裁の対象になり得る「為替操作国」の認定はなかった。
もっとも、報告書は中国について「為替介入を公表しておらず、為替レートの仕組みの主要な部分について透明性を欠いているため、主要国の中では異例な存在だ」と指摘。注意深く監視を続けると強調した。
日本経済新聞
財務省は7日、政府・日銀による2022年10~12月の為替介入の日次実績を発表した。10月21日と24日に円買い・ドル売り介入を実施した。円安・ドル高を抑えるため立て続けに介入していた。10月21日の介入額は5兆6202億円で、1日あたりの規模はデータを公表している1991年4月以降の円買い介入で最大となった。
政府・日銀は急速な円安を抑えようと9月22日に24年ぶりに円買い・ドル売り介入に踏み切った。円安が続いたため10月も追加で介入していた。10月24日の介入額は7296億円だった。9月22日と合わせた9~10月の介入額は9兆1880億円だった。11~12月は介入がなかった。
10月21日は円相場が一時1ドル=151円90銭台と32年ぶりの安値を更新した。その後、政府・日銀の円買い介入を受けて一時1ドル=144円台まで円高が進んだ。週末を挟んだ24日も一時1ドル=149円台後半まで下げた後、145円台まで急騰し、介入の観測が浮上していた。
日本経済新聞
介入の判断は財務省の国際部門のトップである財務官が事実上、下すことが多い。9月22日は日銀が大規模な金融緩和を続けると決めたことで円安が進み、神田真人財務官が介入が必要と判断して鈴木俊一財務相の了解をとった。決定後は財務省から日銀に対して、介入額などを具体的に指示する。
日本の夜間や休日に介入するときは海外市場で実施する。日銀が直接取引することもできるが、各国の中央銀行に委託することもある。米国市場なら連邦準備銀行のひとつのニューヨーク連邦準備銀行、ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)や各国の中銀、英国ならイングランド銀行が相手となる。委託を断られることはまずないという。
受託した海外中銀は日銀が日本市場で介入するのと同様の取引を海外市場で行う。
9月22日は日本政府の外貨準備のみを使った単独介入だった。一方、複数の通貨当局が協議のうえで、それぞれの当局の資金を使って同時か連続的に実施することを協調介入という。投入できる資金の規模が大きくなるため、相場を動かす力が増す。
24年前の1998年6月の円買い・ドル売り介入は日米当局がそれぞれ資金を出し合った協調介入だった。為替市場の歴史に残る85年のプラザ合意は5カ国による協調介入だった。日米と英国、ドイツ、フランスが行きすぎたドル高に歯止めをかけることに合意し、それぞれの資金でドル売り介入を実施した。
主要7カ国(G7)は2000年にユーロ安阻止のためのユーロ買い、11年には円高是正のための円売り介入で協調した実績がある。
9月22日は午後5時ごろに介入し、5時15分ごろに神田財務官が財務省内で記者会見を開いて「先ほど断固たる措置に踏み切った」と表明した。わずか40秒ほどで会見を切り上げると、「いま作業しているので後ほど」と言い残して執務室に戻った。なるべく早く介入の事実を市場に知らせたいという意向がにじんだ。
市場では「政府・日銀は動かない」との見方が多かっただけに、神田氏の表明がサプライズとなって円高が進んだ。一時、介入前より5円以上円高の1ドル=140円台となった。
介入の事実を公表しない「覆面介入」もある。03~04年に断続的に35兆円をつぎ込んだ円売り・ドル買いや11年の円売り・ドル買いが代表例だ。投資家はいつ介入があるか疑心暗鬼になりやすい。
10月13日夜、米国の消費者物価指数(CPI)の発表を受けて1ドル=147円台後半と32年ぶりの円安となった直後、市場に大きな円買いが入り、一時1円以上円高に振れた。9月22日に続く政府・日銀の為替介入だったとの見方がある。財務省幹部は介入の実施について「言うときもあれば、言わないときもある」と曖昧にしている。
財務省は毎月末、直近1カ月の介入実績を発表する。次回は10月31日午後7時に9月29日から10月27日の実績を明らかにする。13日に介入していれば、ここに表れる。もっとも、この段階で公表するのは期間中の合計介入額で、どの日にどれだけの規模の介入をしたかはわからない。日次のデータは四半期ごとに公表する。10~12月分が出るのは23年2月上旬になる。
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